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青春18きっぷでJR以外に乗れる区間がある!

青春18きっぷについて」のページでしつこく書きましたが、青春18きっぷはもちろん、ほかのJR線の切符でJR線以外の路線(私鉄線など)には乗ることができません。JRで売っている切符なのですから、JR以外で乗れないのは当然です。

ところが、2010-2011年冬シーズン以降、18きっぷの注意事項にある文言が追加されました。実物で確認してみましょう。

 

18ticket220701▲2010年夏シーズン発売の切符

18ticket221201▲2010-2011年冬シーズン発売の切符

5番目の項目に、「ただし青い森鉄道線の青森~八戸間については、通過利用する場合に限り普通列車の普通車自由席に乗車できます。当該区間の青い森鉄道線で下車した場合、別に運賃が必要となります。」という二文が追加されています。

ちなみに、これは「常備券」と呼ばれるタイプの18きっぷで限られた一部の駅でしか販売されていない様式なのですが、普通に駅で買える(いわゆるマルス券の18きっぷ)でも同様の注意事項が書かれています。

これは、2010年12月の東北新幹線八戸~新青森開業に伴う東北本線八戸~青森の経営分離を踏まえたルール改定なのですが、2015年3月の北陸新幹線長野~金沢開業に伴って、同様のルールが「IRいしかわ鉄道線(金沢~津幡)」および「あいの風とやま鉄道線(高岡~富山)」(どちらも元北陸本線)に設定されています。

つまり、先に挙げた青い森鉄道線青森~八戸も含めて、2015年春シーズンの時点で3区間のJR以外の路線に乗車することができるのです。

これは一体なぜなのでしょうか? 路線図を用意しましたので、そちらで対象区間とその周辺のようすを確認してみましょう。

railmap_hokuriku_tohoku

左が金沢・富山地区で、右が青森地区の路線図です。

先に申しておきますが、基本ルールの青春18きっぷで乗車できるのは、黒線で描かれたJR在来線のみです。

どちらの地区も、新幹線が通っていることが目立っていると分かると思います。新幹線そのものはこのルールに直接影響していないのですが、間接的に触れることになります。

「第三セクター鉄道線」というのが何か分かりますか?全部がそうというわけではないのですが、基本的に「国鉄末期頃から廃止対象とされた赤字路線が、鉄道そのものは残したまま、経営が都道府県・自治体が運営する第三セクター会社に移管され、営業している路線」のほとんどが第三セクターだといって構いません(要は都道府県・自治体が運営する企業のことです)。

新幹線と並行する在来線の場合、わざわざ新幹線を開業するくらいですから、決して廃線にするほど大赤字だったというわけではありません。ですが、新幹線ができて、今まで在来線を走っていた特急列車が全て新幹線に移ると、残されるのは地域輸送を担う普通列車のみになり、過疎化・高齢化の進む地方では経営はより厳しくなります。そのため、1997年以降開業の整備新幹線は、多くの区間で並行在来線の経営分離が行われました。具体的には、長野新幹線と同時に廃止・三セク会社として開業した元信越本線、現しなの鉄道線の軽井沢~篠ノ井が最初の例です(高崎~横川および篠ノ井~長野はJRとして存続、横川~軽井沢は路線自体が廃止)。

上にあげた金沢・富山地区と、青森地区では、それぞれ金沢~富山(~長野)と(盛岡~)八戸~青森が該当します。

しかし、今までの経営分離区間は、JRでなくなったからといって18きっぷが使える特例のようなルールは設定されず、乗れなくなるだけで終わっていました。ではなぜ、この3区間だけは特例が設定されたのでしょう?

もう一度路線図を確認してみてください。金沢・富山地区では氷見線城端線、青森地区では大湊線に注目してみてください。氷見線と城端線は新高岡駅でJRの北陸新幹線と接続していますが、ほかのJR在来線とは接続していません。大湊線の場合、新幹線とすら接続しておらず、JRとしては完全に離れ小島の路線となってしまっています。また、図からははみ出ていますが、同様に七尾線八戸線もほかのJR在来線と接続していない、離れ小島となってしまっています(七尾線に関しては、大湊線と同様新幹線とも接続していない)。

これらの路線は、新幹線が開業する前までは北陸本線や東北本線、つまりほかのJR在来線と接続しており、青春18きっぷでも自由に行き来することができました。それが、新幹線開業とひきかえに青春18きっぷでの通行路が閉ざされてしまったのです。

しかし、離れ小島となってしまってもJR線である以上、青春18きっぷで乗ることは出来ますし、不便になることは鉄道会社ももちろん理解しています。それどころかこれら離れ小島の路線でも青春18きっぷは売っています。そのためこの特例ができたのです。

切符のルールを見返してみましょう。「通過利用する場合に限り」と書かれています。たとえば大湊線の場合、青森から先の奥羽本線・津軽線は今まで通り全国のJRネットワークに繋がっていますから、青森~野辺地を乗れれば、東京や北海道に行くこともできます。このように、「全国ネットワークと離れ小島を中継する」という役割が、この3つの特例区間にはあるのです。

そのため、特例区間の途中駅では下車することが出来ません。ただし、途中駅であっても大湊線の駅でもあるとみなされる野辺地に関してだけは、降りることが出来ます。

そりゃあ、降りられれば便利なことは間違いないですが、そもそもJRでなくなった以上普通に考えたら乗れなくなるのは当たり前のことなので、特例があるだけでもありがたいでしょう。降りたいなら、素直に諦めてほかの切符を買うか、この区間の運賃を別途払いましょう。

また、落とし穴が一つあって、金沢・富山地区のうち津幡~高岡には乗れないということが挙げられます。特例区間は、あくまでも金沢~津幡と高岡~富山に別々に設定されているのです。これは先ほど説明した「全国ネットワークと中継する」ということが理由です。

七尾線が金沢まで繋がっていたら、そこから先の北陸本線で福井や関西方面に行くことができます。では。氷見線と城端線はどうでしょうか。実は、富山まで繋がっていれば高山本線で岐阜・名古屋方面に行けるのです。七尾線から氷見線に青春18きっぷだけで乗りに行こうと思ったら、

津幡(IRいしかわ鉄道線)金沢(北陸本線)米原(東海道本線)岐阜(高山本線)富山(あいの風とやま鉄道線)高岡

という最短距離の何十倍もの大回りをしなければなりません。あくまで全国ネットワークのどこかと繋がっていればいいだけなので、このようなことになっているのです。

 

以上のように特例について説明してきましたが、青春18きっぷのルールが悪いというよりも、そもそもJR線が経営分離されることが悪いのです。確かに儲からなくなる路線ではありますが、普通運賃の値上げなどもされ、元より市民生活に悪影響を与えることは明らかです(それでも地域密着になる分、普通列車の増発や新駅開業などで利用客および収入の増加のためにいろいろな策を講じている)。

また、今後北海道新幹線開業に伴う江差線(木古内~五稜郭・函館)や更に先の札幌延伸開業、ほかにも北陸新幹線敦賀延伸に伴う北陸本線(敦賀~金沢)の更なる経営分離が決定しています。そうすれば、離れ小島になる路線はもっと増えてしまいます。それどころか、中継する第三セクター鉄道線の距離も、馬鹿にならないほど長くなってきます(敦賀~福井~金沢~津幡など)。

そうなると、今は特例で済まされている切符のルールも、もっと大きな改訂をせざるを得なくなるかもしれません。

近いうちに、来年2016年の北海道新幹線新青森~新函館北斗の開業によって、本州と北海道を結ぶ津軽海峡線から在来線列車が消滅してしまいます。と同時に、このままでは青春18きっぷでは乗れなくなってしまいます(この区間は元々特急しか走っていないが、特例で青春18きっぷでも乗れるところがある)。

今後、JR6社がこのような区間に対してどのような措置をとっていくのか、あるいはとらないのか。鉄道ファンのみならず、旅行者や地元の方からも大きな注目を集めているのです。

もしかすると、青春18きっぷで思う存分旅することは、今のうちしかできないのかもしれません・・・・・・。